耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
「ミネ………では、こうしませんか?俺はあなた以外の女性のためにはお菓子は(・・・・)作りません」

「お菓子は?」

「はい。お菓子はたいてい前もって作るものなので、いきなり作ることもないでしょう?もちろんあなたが作りたい時には、そのお手伝いはします」

「お手伝いは、してくれるの………?」

「はい。———そもそも、以前は甘いものはほとんど作らなかったので、特に不便はありません」

「そうなの?」

「ええ。お菓子は、あなたを喜ばせたくて作り始めたので」

「そっかぁ」

怜がスイーツを作るようになったのが『自分のため』だと聞いて、美寧の顔がほころぶように笑顔になる。

「今度はお父さまのために、何か甘すぎないお菓子を作りたいな。たくさんプレゼントを頂いてたから、私も何かお返しをしたいの………」

「ああ………確かにあれは圧巻でしたね」

「私もあんなにあるなんて思わなかったよ………」

二人が思い浮かべたのは、美寧の実家のとある場所。

“屋敷”と呼ぶにふさわしいほどの広さがある当麻邸。その奥まったところにある扉の前に兄は二人を案内した。そして開かれた扉の向こう側には、うず高く積まれた化粧箱や所狭しとハンガーにかけられた洋服が。

『これって……』と驚く美寧に、『父さんから美寧へのプレゼント置き場だ』と兄が言った。
聞くと、祖父から突き返されたものから渡しそびれたものまで、ミネへのプレゼントがおかれているらしい。

何個か箱を開けてみると、こども用の可愛らしい洋服、カバン、帽子、年代が上がると大人物の服から綺麗なブローチや髪飾り、化粧品までと多種多様なものがあった。

最後尾にいた父は気まずそうな顔をし、そんな父に『さっきの仕返し』とばかりに『まだ美寧に言ってなかったのですか』と兄が呆れたように言う。

美寧は父と兄の間を目で数往復したあと、大きな笑顔になり、『ありがとうございます、お父さま』と言った。

一気に全部は持って帰れないし、もう使えなくなったものもある。またゆっくりと遊びに来た時に見てもいいかと訊いて、美寧はその小部屋を後にした。

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