耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
「じゃあ、決まりね!『約束の』、えっと……こういうのってなんて言うんだっけ?変更じゃなくて、もっと『今』の私たちに合わせて……」

「update……『更新』、でしょうか?」

「そう、『更新』!———『約束の更新』をしよう。これからずっと一緒にいるんだもん。何かあったら、その度に二人で更新していけばいいんだよね?」

「はい。二人でこれからずっと『更新』をしていきましょう」

少し明るくなった表情で頷いた怜。けれどすぐ、驚きに両目を見開いた。

「ミネっ!?」

怜が急に焦った声を上げた。「どうかしたの?」と訊こうと口を開いたところで、美寧は自分の頬が涙に濡れていることに気が付いた。

「あれ……やだっ、なんで………」

びっくりして頬を拭うけれど、次々に涙がこぼれてくる。

美寧にとって、初めての怜との『喧嘩』だった。
慣れないことをした上に、ちゃんと『仲直り』出来たことに安心したせいで、涙腺がゆるんだのだ。

手の甲でゴシゴシと瞳をこすったあと、開いた瞳に宙で止まっている怜の手が映る。泣いている美寧に触れていいのか躊躇(ためら)っているように。

美寧は思い切って怜の胸に飛び込んだ。逞しい体に腕を回してぎゅっとしがみ付く。

「———『更新』して」

「え?ミネ………?」

戸惑う声に訊き返されて、抱き着いたまま顔を上げる。見開かれたすずやかな瞳とぶつかる。

さっきの(・・・・)も………『更新』してほしいの」

怜の瞳がさらに見開かれる。美寧は途端に自分が言ったことが恥ずかしくなって、赤くなった顔をまた怜の胸に(うず)めた。そこに顔をぐりぐりとこすりつける。

「良いのですか………?」

伺うように訊かれて、小さく頷く。

「あんなことをした俺に触れられるのは嫌じゃない?」

もう一度頷く。さっきよりも少しだけ大きく。
すると、「ミネ……顔を見せて?」という声が降ってきた。ゆっくりと怜の胸から顔を上げる。すると、ふわりと柔らかなものが額に触れた。

「キスしてもいい?」

優しい声。懇願するような瞳。少し下がった眉。

胸の底から込み上げてくる愛しさに、ふわりと顔がほころぶ。返事をする代わりに瞼を下ろす。

優しいくちづけが降ってきた。


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