耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
何度かお互いの気持ちを確かめ合うような“特別なキス”をした後、離れていく怜の唇にゆっくりと瞼を持ち上げる。

さっきとは違う理由で潤んだ瞳。じっと見上げていると、怜が困ったような微苦笑を浮かべて、美寧をゆるく抱きしめた。

「れいちゃん………?」

呼びかけるけれど怜は返事をせず、その代わりなのか、美寧を抱く腕がきゅっと締まる。
それに応えるように美寧も彼の背中に回した腕に力を込めた。———と、そのせいであることに気付く。

「あっ!」

怜の体から腕をほどき、自分の膝の上の『あるもの』を見下ろす。二人の体に挟まれて潰されかけていたぬいぐるみの犬(・・・・・・・)を抱き上げた。

「ごめんね………苦しかったよね」

さっき怜に押し付けたことも思い出して、更に申し訳なくなってしまう。
ふわふわの毛を撫でながらそのことを反省していると、斜め上からの視線を感じた。

美寧が顔を上げるのと、怜が口を開くのは同時だった。

「ずいぶん気に入っているのですね」

「ん?この子のこと?」

「ええ、他のものはほとんど持って帰って来なかったのに———」

“美寧専用プレゼント部屋”から美寧が持って帰ってきたのはこの犬のぬいぐるみだけ。
あとは自分の部屋の机に置きっぱなしにしてあった“ドイツ製百二十色色鉛筆”———祖父からプレゼントされたものだ。

「お洋服とかアクセサリーは、ひとつ出したら『あれもこれも』って言われそうな気がしたし……」

「ああ、確かに」

特に聡臣(あきおみ)が言いそうだと思い、怜も頷く。

「それにね、目が合ったから………」

「このぬいぐるみと?———ああ、山積みの箱の一番上に乗っていましたしね」

「それもあったけど………」

腕の中の犬をじっと見つめていた美寧は、視線だけを持ち上げ怜を見て口を開いた。

「……なんだかれいちゃんに似てるな、って」

怜が大きく目を見張った。思わず、という風に美寧が抱える犬のぬいぐるみをまじまじと見つめる。
体長七十センチほどの茶色い犬。黒くつぶらな瞳が、怜をじっと見上げている。
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