耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー
[2]


肌を撫でる夜風が冷たい。
十月も下旬に入り、日中はまだ暑い日もあるが、朝晩は大分冷え込むようになった。
冷たい夜風に素肌を撫でられ、美寧は少しだけ肩を竦めた。

ふわりと肩に何かを掛けられた。怜のジャケットだ。
隣を振り仰ぐと、「着ていてください。風邪を引くといけませんから」と言われる。

「でも、それじゃれいちゃんが、」

「俺は今は寒くありません。むしろ食べたばかりで暑いくらいです」

怜はそう言うと、「ちゃんと袖を通しておいてくださいね」と続けた。

数時間前に怜が買ってくれたニットは、お天気が良い日中は暑いくらいだった。
けれど陽が暮れて、少し肌寒く感じていたのを怜に気付かれていたのだ。

くしゅん、とクシャミが出たところで、怜に「ほら、早く」と言われてしまった。

「ありがとう、れいちゃん」

言われたとおりに怜のジャケットに腕を通して、隣を見上げる。

「これもだけど、他も色々……。お寿司もご馳走になっちゃったし、お洋服も……このネックレスも」

鎖骨の間にある花びらに触れながら言う。

今日一日で怜にいったいどれだけのお金を払わせてしまったのだろう。
ただでさえ彼の家に居候している身なのに、こんなに沢山買ってもらって、嬉しい気持ちよりも申し訳ない気持ちが勝ってしまう。

怜に手を引かれて歩く美寧の視界の中で、白い裾がふわんふわんと揺れている。
何も言わず美寧の手を引いて歩いていた怜が、突然「すこし寄り道しましょうか」と言った。

怜に用事で寄りたい店があるのかと思い、美寧は、「うん」と頷いた。


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