耽溺愛2-クールな准教授と暮らしていますー


使った食器を怜が洗い、美寧が拭き上げる。
うっかり手を滑らせないよう慎重に丁寧に水気を拭き取りながら、美寧は先日涼香と一緒に買い物をした時のことを思い出していた。


ひと通り買い物が済んで、休憩がてら入ったカフェで咲かせたお喋りの花。
その中で、涼香はこんなことを言っていた。

『私、フジ君の家に大学時代からお邪魔していたけど、あの家で彼と二人きりになったことはないのよ。私が呼んでもらえるのはナギが一緒の時だけ。おまけのようなものかしらね』

涼香はこうも言った。

『私が知る限り、フジ君はこれまで付き合っていた人をあの家に上げたことは無いと思うわ』

だから四か月前、怜に突然『来て欲しい』と呼び出されたことにまず驚き、行ってみるとあの家に“女の子”がいることに更に驚いたのだ、と。

『どうして彼が家に恋人を呼ばなかったのかは分からないけど、少なくとも美寧ちゃんはフジ君にとって“特別”なのは事実だと思う。だから、美寧ちゃんは変な気後れなんてしないで、遠慮なくフジ君と一緒にいたらいいの。でももし、彼に泣かされるようなことがあったら―――』

美寧の目をまっすぐに見つめ、涼香は壮絶に綺麗な微笑みを浮かべ、そしてこう言った。

『いつでも私を頼ってね。私がガツンと言ってあげるわ』

綺麗な微笑みを崩し、茶目っ気のある笑顔で美寧に向かって茶目っ気のある顔でウィンクを飛ばした。



(涼香先生には最初からバレてたんだわ……)

あの日、涼香がやってきた時。美寧が涙目だった理由。

涼香に『何があったの?』と問われ、『大学の女の子たちがみんな素敵だった。自分にお化粧を教えて欲しい』と言ったのが、本当の理由ではなかったことを。

元を正せばそれも間違いではないのだけど、美寧の涙は羞恥と驚きから出たもので、どうしてそうなったかということを、あの場で涼香に説明することは憚られた。だからああ言うしかなかった。

(どうして、れいちゃんはこれまでお付き合いしていた人をお家に呼ばなかったのかなぁ……)

料理がとても好きな彼なのに、自分の恋人にそれを振舞いたいと思わなかったのだろうか———

< 91 / 427 >

この作品をシェア

pagetop