偽りの花婿は花嫁に真の愛を誓う
「ん?
……ああ。
この間、見せてもらったんだよ、お義母さんに。
成人式の写真を」

私の視線に気づいたのか、一瞬だけ彼が手を止める。
けれどすぐになんでもないように言い、食事を再開した。

「そう、ですか」

「ああ」

もうこれ以上訊けないので、この話題はここで終了。
この、ちょいちょい知らないはずの、結婚式前の私のことを話すのはなんなんだろう?

「じゃ、いってくるな、李亜」

「いってらっしゃい」

今日も私にキスして、彼は仕事に出ていった。

「さて。
片付けしてひと運動しようかなー」

私はキッチンで、お皿を食洗機へ入れていった。

御津川氏のとの生活はようやく、ひと月を過ぎようとしている。
この間は私の実家へ、挨拶に行った。

『あのときは助けていただいたうえに、娘までもらってくださり、ありがとうございます……!』
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