偽りの花婿は花嫁に真の愛を誓う
彼に完全にひれ伏した父には複雑な思いだったが、あんなことがあった娘の今後を憂える親としては、こんな社会的に立派な人と結婚したというだけで一安心だろう。

さらに彼は祖母を気遣って、昔ながらの建売住宅でバリアフリーにはほど遠い我が家のリフォームを買って出た。
いや、以前から私は言っていたのだ、お金は出すからリフォームしよう、って。
祖母だけじゃない、父も母もいまから年を取り、不便になってくる。
けれど、私の稼いだお金は自分のために使いなさいって、父は頑として首を立てに振らなかった。

――なのに。

『この家は少し、不便ですね。
足腰の弱ったお祖母様には危険もある。
私がお祖母様にも快適な家を、プレゼントしましょう』

にっこりと笑った御津川氏に、両親が恐縮しきったのはいうまでもない。
結局、家をリフォームすることで折り合いをつけ、さらにMITSUGAWAの最高ホームセキュリティまでつくことになった。

彼にはもう、感謝してもしきれない。
当然、お礼を言ったものの。

『ん?
李亜のご家族はもう、俺の家族だ。
家族のためにするのに、理由なんかいるのか?』
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