偽りの花婿は花嫁に真の愛を誓う
「まあ。
そうなんじゃないかって思わなかったわけでもないので」

結婚詐欺師でもかまわない。
一生に一度でいいから私を花嫁にしてくれたら。
なのによりもよって今日、逮捕されるなんて。
まあもっとも、初めから式に来る気があったのかすら、こうなると疑わしいが。

「ふーん。
で、どうするよ?
このまま、中止にするか、代理に俺を立ててとりあえず式を挙げるか」

軽く握った拳を顎に添え、男が私の顔を上げさせる。
あった視線の先ではレンズの向こうから、愉悦を含んだ目がこちらを見ていた。
今日は会社の、元同僚たちが来ている。
中止にして男に逃げられたのか、なんて思われるのはまだ我慢できるが、私の見栄と妄想だったんだろうなんて断定されたら……死ねる。

「ええいっ、女は、度胸!」

気合いを入れようと思いっきり、両手で頬を叩く。
もうここまできたら、腹を括るしかないのだ。

「わかりました。
よろしくお願いします!」

「そうこなくっちゃな」
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