偽りの花婿は花嫁に真の愛を誓う
夜は取締役就任のお祝いだって、ヒルズのレストランで食事だった。

「一週間ぶりのまともな食事……!」

「いや、昼食っただろ」

「うっ」

確かに昼食は普通に食べたけれど。

「……でも、御津川さんいなくて社長でひとり、ケータリングだったから……」

さすがに株価が一気に落ちれば、社長もじっとしているわけにはいかない。
終わるまで待ってろ、はよかったけど、彼はまともに昼を取る時間すらなかった。
おかげで市場が閉まる直前には若干持ち直し、一安心だ。

「可愛いな、李亜は」

眼鏡の奥で目尻を下げ、彼がうっとりと私を見る。
それだけで、心臓は勝手に甘い鼓動を刻みはじめる。

「夏原社長には連絡入れたのか?」
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