偽りの花婿は花嫁に真の愛を誓う
「どこでこんな美しい女性を、射止められたのですか」

「ええ、それはまあ、秘密ということで」

にっこりと御津川氏が笑顔を作り、小さく笑いが起こる。
さすがに、結婚詐欺に遭った女を興味本位で見にいって、などということは言わないらしい。

「彼女はどちらのご出身で?
あまり、見かけない顔のようですが」

少し年配の男性の、若干、見下すような問いに顔が引きつった。
暗に、庶民出の私を莫迦にしているはひしひしと伝わってくる。

「李亜は、FoSの営業統括部で、営業社員として働いていた才女ですよ。
しかもあのエリート集団の中で、かなりの成績を上げていた。
きっとこの先、私を立派に支えてくれます。
そういう、引き抜きの意味も兼ねて結婚したのですから」

御津川氏は弥勒菩薩並みに美しい笑みを浮かべたが、眼鏡の奥の目は少しも笑っていない。
それは私の背筋を逆立たせたものの。

「へえ、そうなんですね。
あのFoSの営業統括部で。
それは失礼いたしました」

男性は穏やかにあたまを下げ、その場を去っていった。
ああいうのはセレブとしての余裕、なんだろうか。
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