偽りの花婿は花嫁に真の愛を誓う
「また近いうちに食事でもしましょ?
じゃあねー」

ひらひらと手を振りながら、純さんはラウンジに消えていった。

「純は東峰さんと違って気さくだから、困ったときは頼るといい」

「……わかり、ました」

エレベーターが到着し、ふたりで乗る。
御津川氏は気づいていないんだろうか、あの、純さんの視線に。
あれはまるで、獲物を見つけた蛇そのものだ。
いかにして獲物――私を、丸飲みにして亡き者にしようかと考えている。

まっすぐ帰るのかと思ったが、まだ開いている階下のレストランに寄った。

「肉のハーフコース。
ワインは軽めの赤で」

メニューも見ずに御津川氏が注文をする。

「ラウンジでも軽い料理は出ているが、あれじゃ足りないだろ?
もっとも、緊張でろくに食べられなかっただろうけど」

注がれた、食前酒のシャンパンの入ったグラスを軽く上げ、ニヤリと彼は右の口端を持ち上げた。
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