オフィスラブはじまってました
 猫を撫でるという行為のために側にいるのはわかっているのだが、見知らぬ男の人にいきなり此処まで側に来られるのは怖い。

 というか、夜中に、一時間以上、白衣で木に登っている人が怖い……。

 っていうか、猫を撫でているにしても近いっ、
と思っていたが、近い理由は、この男が猫しか認識していないからのようだった。

 たぶん、私のことは、猫が載っている台、くらいにしか思ってないな、と思って仕方なくじっとしていた。

 猫好きなら、ある程度撫でたら満足するだろうと思ったのだ。

 男は猫の頭を撫でている。

 猫は最初、ごろごろと気持ち良さそうにしていた。

 男はまだ猫を撫でている。

 猫がごろごろ言わなくなった。

 男はまだ無表情に猫を撫でている。

 猫の顔色が変わってきた……

 気がした。

 男はまだ撫でる手の形をしていたが、猫はひなとの腕から飛んで逃げていた。
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