オフィスラブはじまってました
「私も祖母が昔から親しくさせていただいて、子どもの頃から存じ上げているのですが」
と支配人は、女学校でも憧れの的だったという、マダム澄子伝説を語り出す。
 
「政略結婚を嫌がって、駆け落ちされたそうなんですが。
 今でもたまに集まりに顔を出されるそうですよ。

 祖母が大変楽しみにしております。

 今後ともよろしくお願いいたしますね」
と支配人はひなとを向いて頭を下げた。

「こ、こちらこそ、よろしくお願いいたしますっ」
とひなとは、なにをよろしくお願いされたのかわからないまま、日本人特有の条件反射で、ペコペコと頭を下げる。

 外に出てから、瑠美子に、
「あんたそのマダム澄子様とやらの知り合い?
 なにをよろしくお願いされたの?」
と訊かれたが、なにをよろしくお願いされたのか、結局、わからないままだった。




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