オフィスラブはじまってました



 日もすっかり落ちた頃、ようやく帰宅してきた柚月はアパートの廊下を歩いていた。

 すると、予告もなく、ひなとの部屋のドアが開いて驚く。

「お帰りなさい、柚月さんっ。

 あっ、すみませんっ。
 さっき、澄子さんと話してて。

 澄子さんにヒムラさんって言ったら、柚月さんのご家族と混乱するかと思って、ずっと柚月さんって呼んでたもんで」

 申し訳ございません、と謝られた。

「いや……、柚月でいい」
と言いながら、

 なんだろう。
 ちょっと嬉しい気がする。

 気のせいだろうか。
 気のせいだろうな……、

 などと考えている間に、ひなとはガサガサと玄関から白いビニール袋を持ち出してくる。

「これ、二人で料理して食べろって言われたんですけど。
 新玉ねぎってなににしたらいいんですかね?」
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