オフィスラブはじまってました
 やけに静かな夜だった。

 アパートも田中の部屋に明かりがついているくらいで、他は暗く。

 おじさんが去ったあとは、人の気配もしない。

 もちろん、側溝に入野がおかしな扮装をして潜んでいることもない。

「これって夢なんですかね?」

 唐突にそう言ったひなとに、
「なんでだ……」
と緒方が問うてくる。

「いや、こういう、いつもと違う静かな空間にいると、ふと、そんな風に思ったりすることないですか?

 そういえば、さっき、ポン太もすごく静かでしたよね」

 ポン太はさっき、おじさんが連れていた犬だ。

「いや、犬だって静かにしときたいときもあるだろうよ」」

「でも、緒方さんも静かですよ」

「いや、俺だって静かなときもあるだろうよ……。
 っていうか、なんで、俺と犬を同列に語る?」
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