オフィスラブはじまってました
「途中でうっかり澄子さんが帰ってきちゃったら、換気してもすぐに匂い消えなくてバレちゃいますよね。

 それと、柚月さんとか、デカイおうちの人には経験ないと思いますけど。

 うちのお父さんとか、ときどきお母さんがうるさいんで、ひとりになりたいって言うんですよ。

 家、そんなに広いわけじゃないから、書斎とかに閉じこもっても、お母さんや私たちの声が聞こえるから、ひとりになれる感じじゃないし。

 で、結局、釣りに行ったりするんですけどね」

「そうですね。
 別に澄子がうるさいというわけではないんですが……」
と秀継は告白しはじめる。

「たまには、ひとりでゆっくりしたいな、と思って。
 ひとりでカップ麺を食べて、お気に入りの本を読んで、詩吟をうなって」

 ……詩吟だったのか。
 念仏の正体、と柚月が思ったとき、階段の方から緒方の声がした。
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