オフィスラブはじまってました
「うちは母親が言ってますよ。
 うるさい親父の気配のない場所に行きたいって。

 うちなんか、本堂行っても、納骨堂行っても、墓場に行っても、親父の気配がするみたいで。
 お袋、逃げ場ないみたいなんですけどね」

 ああ、それはまた……と苦笑いしながら、緒方の方を見た秀継だったが。

 わああああああああああっとこの世の終わりのような声を上げる。

 この声を聞いてしまったあとだと、二時間サスペンスの殺されそうな人の声って、まだまだ緊迫感にかけるなと思ってしまいそうな声だった。

 階段を上がってすぐのところ、緒方の後ろに澄子が立っていた。

 今日はその手に包丁はない。

 だが、そのまなざしはナイフよりも包丁よりも鋭かった。
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