オフィスラブはじまってました




 そのあと、ホームセンターも回って、アパートに帰った。

 アパート前の道に柚月が車を横付けしたところで、近くの生垣に囲まれた畑から澄子が出てきた。

 柚月の車を見て、
「おや、実家帰ってきたのかい」
と言う。

「荷物運んでもらったんです。
 ヒムラさんには本当にお世話になって」
と言いながら、ひなとは、

 ん? 待てよ。
 そういえば、さっき、ヒムラさん、澄子さんと親戚だから、このアパートに住むようになったとかって言ってたな、
と気づく。

 うーむ。
 今、路上で、キャベツと包丁を手に仁王立ちになっている澄子さんとあのお屋敷が上手く結びつかないんだが……。

 まあ、親戚もいろんな親戚がいるしなーと思っていると、
「ちょっと待ってなさい。
 野菜をあげよう、ふたりとも」
と言って、澄子は、ひなとにキャベツをひとつ渡すと、

 泣く子はいねがー、と言い出しそうな感じに包丁を構え、また生垣の向こうの畑に消えていった。

 包丁は野菜を刈り取るためのもののようだった。
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