幸せになりたくて…… ~籠の中の鳥は自由を求めて羽ばたく~
「――ねえ,大智って今,仕事は何してるの?」
彼の口振りといい,着ているものといい,ただの会社員とは思えない。
「オレ? 去年の秋に起業したんだよ。今は社長」
彼はあたしに名刺を一枚くれた。そこには〈株式会社Oプランニング 代表取締役社長 大沢大智〉と書かれている。
「業種は?」
「ITベンチャー。具体的には,依頼先のネット環境を調整したり,タブレットを導入してもらったりとか」
「へえ……」
彼は確か,大学卒業後はどこかの企業に就職していたはずだけど。まさかこの若さで独立していたとは思わなかった。
「里桜は? 今も働いてんの?」
「あー,うん。一応,小さな印刷会社で事務のパートをね」
あたしは結婚を機に会社を辞めさせられたこと,夫の正樹さんにパート勤めしか認めてもらえないことを打ち明けた。
「ふーん? もったいないなあ。つうか何サマだよ,お前のダンナ?」
「家事さえキチンとこなせれば,何もパートにこだわる必要もないんだけどね」