幸せになりたくて…… ~籠の中の鳥は自由を求めて羽ばたく~

 ……フレックスタイム。そんでもって月給制。大智の会社の待遇は,あたしにとって願ったりかなったりの好条件だった。

「里桜,オレはお前と一緒に働きたい。オレがお前を救いたいんだよ。こんなことしかできねえけど……。どうしてか分かるか?」

「…………うん」

 あたしがまだ大智を好きなように,大智もきっとあたしのことがまだ好きなんだ。人妻になったって分かってからも,ずっと。

 でも,これって世間的には許されることじゃないんじゃないの? あたし達は今,すごく(あや)うい橋を渡ろうとしてるんじゃ……。

「……ありがと,大智。でも,すぐには返事できないよ? あの人にも一応お(うかが)い立てないといけないし,パート先の退職手続きもあるから」

 大智の会社で働くこと自体には,あたしは乗り気だった。会社で社長と社員,もしくは仲間として一緒にいる分には,何の問題もないんだから。

 ただ,〝元カレの会社〟だということが問題なのだ。何がキッカケで禁断のオフィスラブに発展するか分からないから。
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