幸せになりたくて…… ~籠の中の鳥は自由を求めて羽ばたく~
「……分かった。返事は特に急がないから,里桜の都合がついた時点で連絡してくれたらいい。オレのケータイ変わってねえから」
「うん。でも,できるだけ早く返事するね」
籠の中の鳥だって,逃げ場所がほしい。それを,大智は用意してくれるというのだ。それなら早ければ早い方がいい。
「……あの,あたしそろそろ帰らないと」
もっと大智と話していたかったけれど,あたしにはそうさせてもらえない悲しい現実が待っていた。
家に帰ったら夕食の支度や洗濯や,その他の家事をあの人が帰るまでに済ませておかなければならない。――あたしのあの家での扱いは,〝嫁〟とは名ばかりで〝家政婦〟とそう変わらない。
そんなあたしの左手に,大智の大きくて温かな右手が重なった。瞬間,あたしの胸が高鳴る。
「ああ,引き留めてゴメン。……里桜,いい返事期待してるから」
彼の会社に入ること,彼の側にまた戻れること。……あたしには何の躊躇もなくなっていた。
「うん」