年下ピアニストの蜜愛エチュード
「五つ上?」

 アンジェロは驚いたように繰り返したが、すぐに微笑んで「そうなんだ」と呟いた。

「そうなんだ……って、あなたは――」

「三嶋さんは僕が嫌いですか?」

「えっ?」

 千晶は目を見開いて口ごもる。

 もちろん決して嫌いなわけではない。というより今、彼に抱いている気持ちは好意に近いし、もともとはファンだったのだ。

「い、いいえ」

「じゃあ好き?」

「え、ええ」

 何もかもがふいうち過ぎて、千晶は混乱しながら頬を染めて頷く。

 すると次の瞬間、そっと顎をすくわれた。腰にも手を回されて引き寄せられる。

「……よかった」

 うれしそうな囁きと共に、再び唇にキスが落ちてきた。

(よかった、って何? 全然よくないんですけど)

 少しぎこちないけれど、どこまでも優しい口づけが続く。

「千晶って呼んでもいいかな? 三嶋さんじゃなく」

「……いいけど」

 ひどく困惑し、ありえないと思っているのに、今度はアンジェロを拒むことはできなかった。
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