可愛くないから、キミがいい【完】
「あのっ、しゅう君、広野みゆです」
「どーも」
「そのピアス、リープロイのでしょう? すごくお洒落」
リープロイはアクセサリーで有名なブランドだ。
しゅう君が身につけているものは、少し前に発売されたやつで、シンプルだけど結構な値段がするもの。
私が話しかけたことで、なほちんが少しむっとした表情をつくったけど気にしない。なぜなら、私の方が可愛いからだ。
それはなほちんも分かっているはずなので、カラオケの個室に入ったら、あおい君のところへ行ってくれると思う。
「あー、これ?」
しゅう君が私と目を合わせて、耳朶を触った。
うん、って可愛く頷いて、さりげなく、しゅう君に近づく。必殺天使スマイルで、もう完璧に狙いは定めている。
ドキドキしてほしいし、ドキドキさせてほしい。
今度こそ、ものにしたい。
「俺、リープロイあんまり知らね。人からもらったやつだし、よく分かってないんだわ」
絶対、女からもらったでしょう?
第六感が働いて、思わず顔が引き攣りそうになったけれど、こちとら天使なので、そんな高いピアスを貢ぐような女には負けてられない。
「そうなんだ、でも、それかっこいい。しゅう君に、似合ってる」
「そう? 褒めてくれて、どーも」
「うんっ」
「つーか、名前なんだったっけ?ごめん、一瞬で忘れた」
はい?と思ったけれど、顔には出さない。
「えっと、広野みゆです」
「オッケー。悪い」
愛想よく笑顔をつくって、可愛い声をだしてサービスしてあげているのに、しゅう君の頬は赤く染まることも、口角をゆるませることもなく、さっき他の男の子たちと話していたときと態度がまるで変わらない。
目が悪いのだろうか。
ひょっとしたら、節穴なのかもしれない。