真夜中のピアノ
夜も更けて、地下街はそろそろ閉鎖の時間

警備員さんが、私をきれいに拭いてくれる

そして、鍵盤にカバーをかけて

警備員さんは見廻りに出掛けた

私の周りには、もう誰もいない

もう夜中の2時

地下街は、しんと静まり返っている

明日も、いろんな人が、弾きに来てくれるといいな

下手でも、拙くてもいいから

とにかく、私に触れて

…あの視線だ

私を見ている

誰?どこにいるの?

近づいてくる。何だか怖い。

その気配は、すうっと近づいてきて

私の前で、止まった

気配だけ感じる。姿は見えない

私の鍵盤カバーが、「ギギギギッ」と音をたてて開く
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