私と貴女の壊れた時計
次の日も。

その次の日も。


バイトから帰っても、真宙が出迎えてくれることはなかった。


真宙が来ないことで、私の食生活のレベルは最悪なものになってしまった。

惣菜だとか、カップ麺だとか、栄養バランスもあったもんじゃない。


ただ、お腹を満たせるならなんでもよかった。


「なんか、元気ない?」


そんな生活をしていたせいで、三日ぶりに会った結芽にそんなことを言われた。


「そんなことはないけど」


答えると、結芽は顔を近付けてきた。

そして私の右頬を突っついてくる。


「肌に艶がない。ちゃんと食べてないでしょ」
「食べてるってば」


結芽の肩を押して、距離を作る。


結芽は疑いの目をやめない。


たった二日。

二日、真宙の作ったご飯を食べないだけで、そんなに変わるのだろうか。


「まあいいや。まともにご飯作れてないのは私も一緒だし」


結芽は隣に座って講義の準備を始める。


結芽と私は違う。

結芽は、少しは自炊をしていると聞いた。

私は、真宙に作ってもらってばかりで、自分で作ったことがない。


一緒じゃない。


「外食だと栄養が偏るとか言われるけど、私たちの場合、外食して野菜食べるほうが健康的だと思わない?」


笑って誤魔化す。


私は多分、真宙のご飯を食べているのが一番いい。


「そういうわけで、今日食べに行かない?」


どういうわけかわからない。


「今日って、いきなりだね」
「忙しい?」


いつもなら断るところだ。

課題に追われ、バイトもあり、帰れば真宙のご飯が待っているから。


でも、今日もまたいないかもしれない。


「……いや、いいよ。行こう」


もしいるなら、連絡をしておけばいい。


私は結芽の誘いを受けた。

それはほぼ初めてのことで、結芽は満足そうに笑っていた。
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