先生がいてくれるなら②【完】
保健室へ一旦立ち寄ると、私の様子を見てすぐに保健室の先生に「保健室で休んでも良いし、帰れそうなら早退しても良いよ」と言われたので、私は早退する事を選んだ。
保健室を出てフラフラと廊下を歩き、教室へ鞄を取りに向かう。
教室では既に5限目が始まっており──運が良いのか悪いのか、数学の授業中だった。
私はしぶしぶ藤野先生の前に立ち「体調が悪いので早退します」と言うと、先生は「そう」といつも通りの冷たい声と態度で返すだけだった。
何かを期待していたわけでは無い。
だけど……やっぱり少し寂しいと思ってしまう自分がいる。
そんなのは間違ってるって、分かってるけど……。
のろのろと帰り支度をしていると、見かねたのだろう、斜め前に座る椿がそれを手伝ってくれた。
「明莉、大丈夫?」
心配そうに小さな声で私を気遣ってくれるが、私は声を出す気力も無くて、それでもなんとか頷く事で椿の問いかけに応えた。
再びしぶしぶ藤野先生の前に立ち、小さく会釈をすると頭上から「気を付けて帰りなさい」と声が落ちてきた。
本心か、それとも生徒の前での仮面を取り繕っての言葉か──。
どちらかは分からないが、私の心に深く刺さった。