先生がいてくれるなら②【完】


──翌日の大晦日。


高峰さんは、彼女が指定した通りの時間にボイスレコーダーを取りに来た。


宣言していた通り、その場で録音内容を確認する……私の目の前で。



再生される、悪夢──。


それを聞き終えた彼女は、本当に可笑しそうに笑った。



「ふふふ、傑作ね、上出来だわ!」



これが演劇の感想であったなら、最高の褒め言葉だろう。


だが残念ながら、これは人を傷つけただけの恐ろしい会話なのだ。


私は思わず顔を顰める。



「ねぇ、教えて? どうして、この言葉を選んだの?」


「……あなたが指定した通りだからです。きっと、いま先生が一番気にしている事だったから」



そう、先生は私と付き合うことになってからずっと、気にしていた。


私が色んな事を我慢してるんじゃないか、って。


私は何ひとつ我慢なんてしてなかったけど。



……あと、この言葉を選んだ理由がもうひとつある。


それは、これが “私に関わる事” だからだ。


先生が言われたくない言葉は、きっと他にもいくつかあるだろうと思う。


例えば、数学に関してとか、家族に関してとか。


だけど、それでは先生の事を否定するだけになってしまう。


先生には数学からもご家族からも、離れて欲しくなかった。



せめてもの償いに、私の事を、恨んで、憎んで、嫌いになるような言葉にしたかった。


恨まれたり憎まれたりして貰えるほどの言葉を投げかけられたかどうかは、今の私には分からないけれど──。


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