先生がいてくれるなら②【完】

「ふぅん。まぁいいわ。それにしても滑稽ね、楽しげな曲が流れてて」



案の定、彼女はそれに触れてきた。


──カラオケの個室を選んだのにも、一応ちゃんとした理由がある。


できる限り、先生にとって何の思い出も無い場所にしたかった。


そして、先生のテリトリーも、避けたかった。


例えば、学校、先生の家、リョウさんとユキさんのお店、あの海辺、ショッピングモール……。


そんな場所での別れは、きっと “大切な場所” から “大嫌いな場所” になってしまうから。



だったら最初から嫌いな場所がいい。


先生がカラオケをしない事は分かっていた。


だから無理矢理連れて行って。


先生はきっと、これからも一生カラオケには行かないんだろうな。



高峰さんは満足げにボイスレコーダーをポケットに仕舞うと、ニッコリと笑った。



「言っておくけど、これで終わりだなんて思わないでね」



彼女の言葉に、私は凍り付く。


分かってはいた、だけど改めて宣言されるとそれは恐怖でしかない。



「先生と別れても学校生活は今まで通りじゃないと、みんなに変に思われるわよ? 分かってるわよね?」


「……」


その通りだ、返す言葉も無い。

< 337 / 354 >

この作品をシェア

pagetop