先生がいてくれるなら②【完】
「ふぅん。まぁいいわ。それにしても滑稽ね、楽しげな曲が流れてて」
案の定、彼女はそれに触れてきた。
──カラオケの個室を選んだのにも、一応ちゃんとした理由がある。
できる限り、先生にとって何の思い出も無い場所にしたかった。
そして、先生のテリトリーも、避けたかった。
例えば、学校、先生の家、リョウさんとユキさんのお店、あの海辺、ショッピングモール……。
そんな場所での別れは、きっと “大切な場所” から “大嫌いな場所” になってしまうから。
だったら最初から嫌いな場所がいい。
先生がカラオケをしない事は分かっていた。
だから無理矢理連れて行って。
先生はきっと、これからも一生カラオケには行かないんだろうな。
高峰さんは満足げにボイスレコーダーをポケットに仕舞うと、ニッコリと笑った。
「言っておくけど、これで終わりだなんて思わないでね」
彼女の言葉に、私は凍り付く。
分かってはいた、だけど改めて宣言されるとそれは恐怖でしかない。
「先生と別れても学校生活は今まで通りじゃないと、みんなに変に思われるわよ? 分かってるわよね?」
「……」
その通りだ、返す言葉も無い。