先生がいてくれるなら②【完】
──土曜日の午後、いつものように私は高峰さんの病室へ行くと、検査中らしく、彼女は不在だった。
そこへ光貴先生がふらりとやって来た。
「ちょっとお話があるので、上まで一緒に来てもらっても良いですか?」
そう言われ、私は光貴先生と共に──教授室に来ている。
「あの、お話って……」
そう尋ねると教授の表情がとても硬いそれに変わり、じっと私を見つめたままだ。
代わりに声を発したのは、光貴先生だった。
「ねぇ、立花さん。僕が前に高峰さんのボイスレコーダーの件で尋ねた事があったよね? 『脅されてない?』って」
「……はい」
「もう一度聞きます。立花さん、本当に脅されてない?」
もう隠し通せない、ううん、最初から隠せてなんかなかったけど……。
私は観念して「……ご想像の通り、です」と答えた。
光貴先生は息をふぅっと吐き、「ごめんね、今まで苦しめてしまって」と悲しそうに私を見た。
「光貴先生が謝ることではないです、これは私の問題ですから」
私がそう答えると、光貴先生と……それまで黙っていた藤野教授が首を横に振った。
「きみ一人の問題では無い。元はと言えばこれは孝哉の問題だ。彼の問題は、家族の……親である私の問題でもある。きみ一人に背負わせてしまって、本当に申し訳ない」
そう言って教授は私に向かって頭を下げた。
光貴先生もそれに倣う。
「やめて下さい! 頭を下げていただくようなことは、何も……」
しばらく頭を下げ続けていたふたりがようやく頭を上げてくれて、私はホッと胸をなで下ろした。