俺様社長の強引愛はただの純粋な愛でした◆おまけのお話を追加しました◆
「み、名字でお願いします」

「なんだよ、名前って言ったくせに面倒なやつだな」

「普通は名字で呼びますよね?」

「どっちでもいいだろ?」

「よくないです!」

人目も憚らずギャアギャアと言い争いをする二人を、通行者たちは“痴話喧嘩”だと生暖かい目で見ていたことは言うまでもない。が、当の本人達は本気で言い合っているので埒が明かない。

「も、もうっ、時間迫ってるので行きますよ」

先に一花が根負けし、不毛な言い争いは終了となった。

新幹線乗り場までカツカツと歩きながら、一花は平常心を取り戻すべく何度も深呼吸をする。

無駄にドキドキさせられたのが何だか悔しい。
“一花”と男性に名前で呼ばれるのはずいぶん久しぶりだ。久しぶりだからドキドキしたに違いない。それ以外考えられない。

そう、何度も自分に言い聞かせた。
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