俺様社長の強引愛はただの純粋な愛でした◆おまけのお話を追加しました◆
新幹線の扉が開いた。
と、優しく腰を押されて、一花は柳田を見る。

「先に行けよ」

「あ、はい」

柳田の後ろをついていく気満々だった一花は慌てて前に出た。
指定席の番号の前で躊躇する。

(やっぱり窓側は社長なのかな……?)

「早く座れよ」

考える間もなく柳田に押され、一花は窓側へストンと座った。

「窓側の方がいいだろ?」

「あー、ありがとうございます……」

(強引なのか紳士的なのか……)

チラリと柳田を見ると、すぐにノートパソコンを開いて講演会の原稿チェックを始めていた。

(うーん、こういうところは真面目よねぇ)

カチャカチャとキーボードを打つ音を聴きながら、一花は窓の外を見る。街中を抜けると一面田園風景が広がり、そして遠くには山も見えた。もしかしたら途中で富士山も見えるかもしれない。

(何だか旅行みたい)

そんなことを考えつつ、一花は窓の外をぼんやりと眺めていた。新幹線に乗るのも久しぶりだ。

突然肩に重みを感じ、柳田は視線を横にやる。
それは一花がもたれ掛かってきた重みだった。

すやすやと気持ち良さそうに可愛い寝息を立てている一花は完全に無防備だった。

「……のんきなやつ」

柳田はふんと鼻で笑うと、一花の寝顔を見ながらパソコンを閉じ、自分も目を閉じた。
一花の穏やかな寝息と新幹線の静かな揺れがとても心地よかった。
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