身代わり花嫁なのに、極上御曹司は求愛の手を緩めない
「あ……」

「『菖悟』だと言っただろう?」

「……はい」

「ほら、呼んでみろ」

私の唇のあわいを、高須賀さまはなまめかしく、赤い舌の先で突いた。吸い込まれそうなきれいな瞳に、私は誑かされる。

「……菖悟さん」

「そうだ。今度俺を高須賀さまと呼んだら、ただじゃおかないからな?」

甘美な命令を受けながら、再び深く口づけられた。

私は二度と彼を高須賀さまと呼ばないと、心の中で何度も誓う。

彼は私の戸惑いさえも楽しんでいるようだった。キスだけで腰砕けになった私を抱きとめ、「自分の部屋に行けるか? 無理ならそこのベッドで一緒に寝てもいいが?」と挑発してくる。

私は勢いよく彼を押し返すと、「だ、大丈夫です、おやすみなさい!」と逃げるように彼の部屋を飛び出した。

自室に入り、ドアを閉めると、私はその場にへたり込む。キスする彼の色気がすごすぎて、どうにかなってしまいそうだった。

これから私、どうなっちゃうんだろう?

少し怖い。でももっと、菖悟さんのことが知りたくなっていた。
< 64 / 146 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop