身代わり花嫁なのに、極上御曹司は求愛の手を緩めない
「はい……ありがとうございます。それじゃあ私、先に休みますね。おやすみなさい」

高須賀さまの心遣いに感謝して、部屋をあとにしようとしたときだった。

「紗衣、ちょっと待て」

椅子ごと振り向いた高須賀さまに呼び止められ、私の心臓が跳ねた。

手招きされ、ほんの数歩の距離を進むのに、息が苦しくなるほど緊張が増す。

「な、なんでしょうか?」

不自然な笑みを浮かべたと同時に腕を引っ張られ、重心がぐらついた私は高須賀さまの上に覆い被さってしまう。

「す、すみませんっ」

慌てて体勢を戻そうとすると、後頭部に手を回されて押さえ込まれた。

「ん……っ」

唇が触れ合い、私は体を震わせた。
高須賀さまは眼差しを交わしながら、至近距離で囁く。

「今日、何度も呼んだな? 俺を『高須賀さま』と」

「……え……?」

「呼んだだろう? この口で」

お仕置きをするように、高須賀さまは私の下唇に噛みついた。甘い痺れは腰のあたりまで広がって、私は何も考えられなくなってしまう。
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