身代わり花嫁なのに、極上御曹司は求愛の手を緩めない
「夫の目の前で妻を口説くとはいい度胸をしている」

苛立ちを隠さない菖悟さんに、私はあたふたする。

「いえ、口説かれていたわけじゃ……。あの人は菖悟さんのお知り合いではないのでしょうか?」

「顔も名前も知らない男だ。紗衣、俺から離れるな」

男性からもらったワイングラスを菖悟さんに取り上げられた。私は黙って、彼の言うことを聞く。

そのあと菖悟さんは、私をひとりにはしなかった。すると、私だけが浮いていると感じていたのが嘘のように馴染め、とても楽しく過ごせた。社交スキルの高い菖悟さんが私をうまく会話に入れてくれおかげだ。

「そろそろ出ようか」

一時間半が過ぎた頃、菖悟さんに声をかけられた。パーティーは最初から最後までいる必要はないらしい。

私はほっとしつつ、彼と会場を辞去する。

けれどホテルを出るのかと思ったら、彼はなぜかエントランスロビーに向かった。

「どうしたのですか?」

尋ねると、彼は目をすがめる。

「上の部屋を予約している。今夜はここに泊まろう」

「え?」

思いがけない展開に、私はきょとんとした。
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