身代わり花嫁なのに、極上御曹司は求愛の手を緩めない
少し眠ると、頭も体もすっきりした。やはり睡眠不足だったようだ。

空腹を感じ、起き上がったときだった。

部屋のインターホンが鳴り、私は玄関へ向かう。

「紗衣、いるか?」

「菖悟さん?」

聞き慣れた声にドアを開けると、そこにはスーツ姿の菖悟さんがいた。

「すまない、北瀬に行くなと言われたんだが、じっとしていられなかった。紗衣が倒れたと聞いて、血の気が引いた」

初めて見る菖悟さんの不安げな表情に、私は慌てて笑顔を作る。

「ちょっと寝不足だっただけです。今少し眠ったら元気になりました」

「本当か?」

菖悟さんは疑いの目をしたままだ。

「本当です。よければ上がっていきませんか? お茶でも淹れます」

私は大丈夫なのをアピールするように、彼を部屋に招いた。わざわざこんなところまで来てくれたのに、すぐに追い返すのは気が引ける。

「狭いところですがどうぞ」

ドアを開け放つと、菖悟さんはためらう素振りをしながらも中に入ってくれた。

そうしてワンルームの室内を、物珍しげに眺めている。

その途端、住環境を見せるのは、自分の内面を曝け出しているような気がしてそわそわした。
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