その手をつかんで
すでにふたりは交際している仲なのだと見て取れた。

しかし、花嫁候補のひとりって、いったい何人候補がいるのだろう?

さすが製薬会社の御曹司……。

「候補というか、親からそろそろ身を固めろと言われていて、何人かと見合いはしているんだけどね。なかなかしっくりこないというか、難しくて……」


お兄さんの苦々しげの物言いから、見合いに乗り気ではない様子がうかがえた。いずれ親が経営する会社を継いで経営者となる彼のパートナーになる人を決めるのは、容易なことではなさそうだ。


「大変なんですね……良い人に巡りあえるといいですね」

「そうなのよ、明日花ー。お兄ちゃんの肩書きと容姿しか見てない人ばかりだから、巡りあえてないの。明日花みたいないい子だったら、お兄ちゃんも気に入ると思うんだけどねー」


瑠奈は話ながら、いつの間にか眠っていた咲里奈ちゃんをベビーベッドにそっと置いた。

それから「そうだ!」と手を叩く。突然の音に咲里奈ちゃんの手がビクッと動いたが、目は覚まさない。

一瞬泣くのでは? と心配になった。変わらず眠っていてホッとする。お兄さんも安堵のため息をついてから、咲里奈ちゃんから瑠奈に視線を移した。
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