その手をつかんで
休日、私は一週間前に蓮斗さんと偶然会った紅茶専門のカフェに行く。
ここを指定されるとは、予想外。お気に入りの店だから、イヤな思い出になる場所にしたくはないのだけども……。
早めに着いた私が入店した時、蓮斗さんはまだ来ていなかった。先週と同じ窓際の席に座って外を眺め、いろんなことを考える。
ここからはアマリリスタウンが見渡せた。見えない部分はあるが、本当にひとつの街になっているとつくづく実感させられる。
大きな木々に囲まれるここは、他とは違う世界があるようだ。この中で生活出来るのは、限られた人たちだけ。
私のような庶民は、外から眺めることしか許されない。瑠奈に会うため、マンションや病院には入った。だけど、本来なら気軽に行ける場所ではない。
蓮斗さんはゆかりさんと結婚したら、ここで暮らすのだろう。
ますます彼は遠い人となる。手を伸ばしても、届かない……。
でも、伸ばそうとは思わない。
「明日花、お待たせ」
蓮斗さんと仕事以外で話をするのは、きっと今日が最後。私は笑顔で「こんにちは」と答えた。
ここを指定されるとは、予想外。お気に入りの店だから、イヤな思い出になる場所にしたくはないのだけども……。
早めに着いた私が入店した時、蓮斗さんはまだ来ていなかった。先週と同じ窓際の席に座って外を眺め、いろんなことを考える。
ここからはアマリリスタウンが見渡せた。見えない部分はあるが、本当にひとつの街になっているとつくづく実感させられる。
大きな木々に囲まれるここは、他とは違う世界があるようだ。この中で生活出来るのは、限られた人たちだけ。
私のような庶民は、外から眺めることしか許されない。瑠奈に会うため、マンションや病院には入った。だけど、本来なら気軽に行ける場所ではない。
蓮斗さんはゆかりさんと結婚したら、ここで暮らすのだろう。
ますます彼は遠い人となる。手を伸ばしても、届かない……。
でも、伸ばそうとは思わない。
「明日花、お待たせ」
蓮斗さんと仕事以外で話をするのは、きっと今日が最後。私は笑顔で「こんにちは」と答えた。