その手をつかんで
社長の発言で蓮斗さんを見ると、彼は項垂れていた。私、失言したかも。

蓮斗さんはポツリと呟いた。


「気持ちに温度差があるような気がする」

「そんなことないです! 蓮斗さんのこと、大好きですから!」

「ほんとに?」

「ほんとです! 結婚すると決めたくらい大好きなんですよ。大好きでなければ、結婚しませんから」


私は必死になって、気持ちを伝えた。そんな私たちのやり取りを見ていた社長が、豪快に笑う。


「アハハッ! いやー、微笑ましいけど、聞いているこっちが照れるね」


秘書が「私もです」と同意した。

ふと『大好き』を連呼していた自分に気付いて、私の顔は一気に熱を帯びる。

人前で何を言っているのだか……。


「えっと、私、食堂の方に行かなくてはならないので」


早めに出勤していたが、もう九時を過ぎていた。蓮斗さんも時間を確認する。


「ああ、そうだね。俺も打ち合わせの予定があるんだった。父さん、進展があったら報告させてもらうよ」

「楽しみにしているよ。野崎さん、蓮斗をよろしくね」
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