その手をつかんで
私たちは、まず専務室に戻った。私は置いていたバッグを持ち、蓮斗さんはノートパソコンを抱える。


「途中まで一緒に行こう」

「はい」


エレベーターにはふたりしかいなかったが、私の降りる階には数秒で着いた。


「では、お先に……」

「待って」

「はい?」


私は振り向いて、ドアの開けるのボタンを押した。蓮斗さんは私の腕を軽くつかんで、顔を近付けた。


「ドキドキするオフィスラブを楽しもうね」

「えっ……ええっ?」


蓮斗さんは、目を見開いた私の頬に素早くキスしてから離した片手をあげる。


「やっぱかわいいな。昼に行くね」


今日の私は何度、顔を熱くさせただろうか。オフィスラブを楽しめる余裕はない。

だけど、胸の鼓動は高鳴るばかりだ。蓮斗さんが甘すぎるのが良くない……。

彼の密着度は高くて、周囲に気付かれるのも時間の問題だった。


「ねえねえ、ふたりが手を繋いでいたのを見たという人がいるんだけど」


総務部で小川さんに追及され、杉田くんまで話に加わる。
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