その手をつかんで
何かを食べる?

食べて、どうしたらいいのかな?

とりあえず、前菜のサーモンを口に入れてみる。

うわっ、とろける……美味しい!


「とても美味し……」


美味しさを伝えている途中で、蓮斗さんはシャッターを切った。


「いい顔、撮れたよ」

「えっ、今撮ったんですか? 変な顔していませんでした? 見せてください」

「そんなことないよ。とてもかわいい顔してるよ。ね、自然でしょ?」


蓮斗さんが見せたスマホの画面には、予想通り締まりのない顔をした私がいた。

自然と言われたら自然だけど、こんな顔を保存されるのは恥ずかしい。

それでも、美味しい食事に私は何度も顔を緩めた。蓮斗さんは豪華な食事に慣れているのか冷静に食べていて、私だけが盛り上がっているような気分になる。

温度差があるよね……。

食べ終えてから、静かになった私に蓮斗さんが首を傾げた。


「まだ足りない? もっと食べたかった? 追加でなにか頼もうか?」

「ううん、お腹いっぱいです! とても美味しかったです」

「じゃあ……どうして浮かない顔してるの? もしかして結婚したことを後悔してるとか?」

「えっ? 後悔なんてしていないです。好きな人と結婚できて、素敵なホテルで美味しく食べれて、幸せです」
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