その手をつかんで
撮られたら撮り返したくなる気持ちは理解できる。でも、撮る前に言ってほしかった。

絶対に変な顔していると思うもの。私は蓮斗さんの方へ手を伸ばした。


「見せてください」

「いいけど、勝手に消さないでね」


渋々といった感じで渡されたから、内心ムッとする。

もしかして、信用されていない?

でもまあ……お試し交際だし、お互いまだ全然知り得ていない仲だから、信じてもらえないのは当たり前かな。

私は、瑠奈のお兄さんだからと信用しているが。

そんなことを思いながら、渡されたスマホの画面に目を向けた。

そこには、ケーキを飲み込んだばかりと思われる私がいた。満足そうに目を細め、口を弓なりにさせていて、だらしのない顔をしている。

なんとなく想像は出来ていたけど、これは消去したい。勝手に消せないから、了承を得たうえで消させてもらおう。


「蓮斗さん、これ写り悪いです」

「そう? ちょっと返して」

「はい。それ、消してもらえ……」

「はい、保護した。やっぱりかわいいよ」

「ええっ!」


失意の声をあげた私に漣斗さんは、勝ち誇った表情を見せる。やられた……彼はただ優しいだけの人ではないようだ。
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