その手をつかんで
立ち尽くしていた私を彼は、優しくエスコートしてくれた。

今の私には、ぎこちなく微笑み返すことしかできない。

先ほどの女性たちに比べて、自分はこの場にふさわしくないと思うから。


「瑠奈から、ちょっとバタバタしてるから30分後に来てと連絡がさっき来たよ。コーヒーでも飲んで、時間を潰そう」

「わかりました。赤ちゃんのお世話、大変でしょうね」

「うん、そうだね」


蓮斗さんが優しく話してくれても、私の心は沈むばかり。

運ばれてきたコーヒーを飲むが、苦味しか感じなかった。絶対美味しいはずなのに、コーヒーにさえもこの場にはふさわしくないと言われているように感じてしまう。


「明日花、体調悪い?」

「いえ、悪くないです」

「でも、なんか顔色がよくないな。すぐ瑠奈のところに行こうか? 気分が良くないなら、休ませてもらおう」

「いえ、すぐに行ったら瑠奈が困りますよ。私は元気なので、もう少し経ってから行きましょう」


早くここから出て、瑠奈の家に行きたい気持ちはあるが、瑠奈が遅れてきてと言ったのは、それはりの理由があるからだ。

だから、慌てない方がいい。
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