その手をつかんで
瑠奈の旦那さんは不動産会社の副社長をしていて、年齢は30歳。

子供の頃から何度か顔を合わせていて、高校生になってから結婚前提の交際がスタートし、瑠奈の大学卒業を待ってからの結婚。

年が離れているからか、瑠奈のことをとても可愛がっていて、大学まで瑠奈を迎えに来ている姿を何度も見たことがある。

大人の落ち着いた雰囲気を漂わせる素敵な男性で、仲睦まじいふたりに私たちは色めきだった。瑠奈はみんなに冷やかされながらも、うれしそうにしていた。

そして、結婚した翌年に咲里奈ちゃんが誕生。幸せな人生を歩んでいて、本当に羨ましくなる。

私もいつか瑠奈のように……と願うが、彼氏がいないどころか誰とも付き合ったことがないから、一生独身で過ごすのではないかと危機感を抱く日々である。

瑠奈に抱かれておとなしくなった咲里奈ちゃんはママを認識しようとしているのか、瑠奈から目を離さない。

小さな手にそっと触れてみる。


「うわ、柔らかい。ふわふわだ」

「うん、生まれたての肌だからね」

「ほんとかわいいね」
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