その手をつかんで
「良かった? それは蓮斗に近付けたからかね?」

「え?」


どうして、ここで蓮斗さんの名前が出てくるの?


「親の許可も得ないで、勝手に婚約したらしいね。やはり瑠奈と仲良くしていたのも、それが狙いだったというわけか。うちのかわいい娘を騙すとは、ひどいね」

「え……あ、いいえ、瑠奈さんと友だちになったのは……」


思いもよらないことを言われ、動揺した。弁解していると、瑠奈が「お父さん!」と声を張り上げる。

瑠奈は抱いていた咲里奈ちゃんを涼輔さんに託した。


「お父さんこそ、ひどいこと言わないで。明日花はそんな人じゃないから。明日花は私の家のことを知っても、変わらず接してくれて本当に優しいの。お兄ちゃんだって、明日花の優しさに惹かれたんだと思う」

「その人は、瑠奈を騙すために優しくしたんだよ。蓮斗を手に入れるためにね。純粋な瑠奈を騙すなんて、やはりあの大学に行かせたのは間違いだったな」

「違うよ、お父さん。私は騙されていない。明日花は本当にいい人なの。いつも、世間知らずの私を守ってくれた」

「だから、それは蓮斗に近付くために瑠奈を利用したんだよ。瑠奈は騙されている、かわいそうに」
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