オオカミ社長の求愛から逃げられません!
「それより早く始めよう。今日は上客が揃ってんだよ」
「そうね。ほら、起きて藤堂さん」
肩を揺さぶられ頭がズキッと疼く。そして無理やり体を起こさせると「見て」と言った。
ゆっくりと重たい瞼を開ければ、目の前にはパーティールームが。ここはもしかして、オフィスビルにあるVIPラウンジ?
しかもそこにはたくさんの男女がいて、お酒や会話を楽しんでいる。だけど目元はみんな仮面のようなものをしていて、普通のパーティーじゃないと直感した。
「目が覚めた? お嬢さん。ほんの少ししか睡眠薬入れてないのに、深く落ちすぎよ」
「……西園寺さん、何が目的なの?」
「目的? そうねぇ、退屈しのぎかな」
悪びれる様子もなく、そう言う神経がわからない。お金持ちだからって、何をしても許されるとでも思ってるの?
「今日はね、ちょっと過激なお見合いパーティーがあるの。ちなみに私が主催者。あなたにもVIPの遊びっていうものを見てもらおうと思って」
「興味ありません」
「嘘よ! 本当はお金持ちに憧れて、私が羨ましいくせに!」
上から浴びせる様に言う。罵声とも呼べるその声に体が竦んだ。この人は私に負けたと言わせたいの? 自分の方が優位だってひれ伏せさせたい?
私になぜこんなに必死になるのか、全くわからない。
「庶民のくせに、満足そうにしてる顔がムカつくの。庶民ならもっと乞いなさいよ。悔しそうにしなさいよ」
顔を近づけ、冷たい声で言う。だけど私は拒むようにふいっと視線を逸らした。
「まぁいいわ。とにかくあなたはここで見ていればいい。楽しい夜の幕開けよ」
彼女の声を合図に、BGMが流れ始める。証明は落ち、より一層大人な雰囲気に。思わずごくりと息を飲んだ。