オオカミ社長の求愛から逃げられません!
「こんなこと、間違っていると思います。あなただって、本当はわかってるんでしょ?」
静かに反論すると、西園寺さんは青筋を立て怒り始めた。
「なに調子に乗ったこと言ってんのよ! 私に逆らわないで!」
「だって、こんなことでしか満たされないんですから」
「あー、もう! あんた本当にイラつく。ちょっと、誰かこの子をあの場所に放り込んで!」
彼女の一声で男性二人が飛んでくる。そして私の腕を掴むと無理やり立たせた。
「ちょ、やめてください!」
「私に意見した罰よ。ハイエナたちの餌になりなさい」
まるで虫でも見るような目で私に言い放つ。
「あの人たちすごく飢えてるから可愛がってくれるわよ」
嘘……私このまま知らない人に? やだ、晴くん、助けて……!
「八神さんはニューヨークでしょ? そんな顔で扉の方を見ても、助けには来ないわよ」
勝ち誇ったように高笑う。もっと警戒するべきだった。そもそも雅樹が取引を中止させたりなんてできるはずがないのに。こんなにも近くに、私を恨んでいる人がいることを疑うべきだった。
ごめんなさい、晴くん……。
私はあなたのお嫁さんには、なれないかもしれない。一筋の涙が頬を伝う。それと同時に、私は集まる群衆の中に放り込まれた。