オオカミ社長の求愛から逃げられません!
西園寺さんもまた、逃げようとしていた。
「おっと、どこへいかれるんですか。西園寺のお嬢様。逃がしませんよ」
だけど日野さんにその行く手を阻まれていた。その傍らには、この前護衛についてくれていたSPのケビンと、ジョンが物々しい雰囲気で立っている。
「離して! お父様に言いつけるわよ!」
「では私どもも、あなたがここでいかがわしいパーティーをしていたことをお話しさせていただきます」
「……みんなで寄ってたかって卑怯よ!」
髪を振り乱し訴える。だけど誰も聞き入れる様子はない。
「西園寺さん、俺はあなたを許さない」
私を腕に抱きながら、晴くんがきつい口調で言った。西園寺さんは悔しそうに唇を噛んでいる。
「その女が悪いのよ。大人しく私に尻尾ふればいいものを」
「里香は、あなたが知っている子達とは違う」
「ふふふ、何それ。バカみたい」
すると、今度は笑い始めた。
「ねぇ、藤堂さん。本当は笑ってるんでしょ? 哀れだって。笑えば? あなたはいいわよね、こんなにも守ってくれる人がいるんだから。私なんてね、こんな風に庇ってくれる人もいなければ、親身になってくれる人もいない。結局いつも一人」
それを聞き辺りを見回すと、さっきまで西園寺さんと親し気に話していた男性も、いつの間にかいなくなっていた。