オオカミ社長の求愛から逃げられません!
「私はこれまで、親の言う通りに生きてきた。学校も友達も親が選んだ。お金も自由に与えてもらった。間違ってないと思っていたし、誰よりも恵まれていると信じていた。だけどその結果がこれ。空っぽな大人のできあがり」
西園寺さんの震える声が虚しく空を切る。そんな彼女に、晴くんが一歩近づき、口を開く。
「俺もあなたと同じだった。親の敷いたレールを歩いてきた。幼い頃はそれが正しいことだと疑いもしなかった。だけどある時気が付いた。自分の人生は自分で決めるって」
晴くんの真剣な口調に、思わず聞き入ってしまう。
「何よ、分かった風なこと言わないで。今更どうにもならない。変えられるわけない」
「置かれた環境に文句を言う暇があったら、足掻いてみればいい」
「足掻くったって、私には何もない」
西園寺さんの言葉に思わず首を振る。
私だって何も持っていなかった。平凡で、なんの取り柄もなくて、苦手な恋からも逃げ続けてきた。だけど一歩踏み出してみたら、幸せが待っていた。
西園寺さんが、いつかそのことに気が付いてくれたらいいと思う。きっとこれまでとは違う、明日が待っているはず。
「同じ境遇に生まれた者同士、君には同情する。だけど今回のことは決して許さない。二度目はない。肝に銘じておけ」
低い声で言い切ると、晴くんは私を連れ、会場を後にした。とり残された西園寺さんの悲痛な泣き声が、外まで響き渡っていた。