オオカミ社長の求愛から逃げられません!
「適当に座って」
「は、はぁ」
あのまま連れてこられた八神社長のオフィス。
シックな色合いで統一されていて、48階からの眺めは足が竦みそうになるくらい高い。下手したら雲にも手が届いてしまいそうだ。
「そういえばまだ名前言ってなかったね。八神晴久です」
柔らかく微笑んで、ソファに座る私の前に腰を下ろす。そしてそのまま見つめられ、ドキッとした。
「あの、これはいったいどういうことか説明……」
「里香は、三日月堂で働いて長いの?」
「え、あ、いえ。まだ2年ほどです」
「そう」
とういうか、里香っていきなり呼び捨て……。大人の男性って、そういうこともいとも簡単にできちゃうんだ。
「そうだ、この前取引先からいただいたお菓子があるんだけど食べる?」
「え?」
お菓子って……。私はこの状況を説明してほしいだけなのに。なんていうか、マイペースな人だ。
「日野、持ってきて」
黙って背後に立っていた男性に命令すると、彼は言われるがまま隣の部屋へと入って行く。きっと社長の秘書さんなのだろう。
さっきまで必死に社長を止めていたのに、こんなことになって呆れているのか、それとも怒っているのか。顔がずっと不機嫌。ちょっと怖い……。