ぜんぶ欲しくてたまらない。



楽しみなことができるとあっという間に過ぎてしまう時間。


気づけばお祭り当日。


咲良ちゃんからお誘いを受けた日にしまっていた浴衣を引っ張り出してきた。


紺色の布地に白い花柄の浴衣。


アクセントに黄色い帯。



「お母さーん、着付けお願い!」


「はいはい。久しぶりに航大くんと一緒に行くの?」



意味深にニヤニヤと不敵な笑みをこちらに向けるお母さん。



「あ、いや……咲良ちゃんとだよ」



コウくんが引っ越す前は毎年のようにコウくんと一緒にお祭りに行っていた。


だからお母さんがそう思うのもわかる。


けれど、夏休みに入ってからコウくんとは会ってもいないし、話すらもできていない。



「ほら、姿勢良くしてー」



お母さんがわたしの前に膝をついて着付けをしてくれる。


わたしと会話をしながらなのに、手が止まることもなく綺麗かつ丁寧。



「……んぐっ」


「あっ、ごめん芽依」



思った以上にグッと帯を締められて、変な声が出た。


こういうところはやっぱり天然なお母さんらしい。


無事に着付けが終わり、次はヘアセット。


わたしは食卓テーブルの椅子に座り、後ろにお母さんが立つ。


お母さん曰く、この高さがちょうど髪を結うのにいい高さらしい。




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